忙しい日常の合間に、アメリカ・シリコンバレーを訪れる機会ができ、空路サンフランシスコへと向かうことになった。数年来話題になり、すでに日本では浮き沈みを目の当たりにしてきたITビジネスの現場の声を聞くことができたので、私なりの実感をお伝えしようと思う。
サンフランシスコから50キロ南のサンノゼまでの広大な土地に、大小あわせて6000以上のIT企業が集まる世界のテクノロジーの中心地、それがシリコンバレーである。ほとんど雨の降らない青空の下、様々な人種が各国訛りの英語を話し、郊外型の大学のように、整えられた緑のまぶしい広々とした土地に余裕を持って建物がたっている。雰囲気はきわめて開放的で、明るく、クリエイティブだ。まばらに目に入ってくる建築途中のビルもその活気を後押しする。パッと見は、そういうところだ。
資金のあるところに才能のある人間は集まると昔からいわれているが、シリコンバレーはまさしくそのうちの一つの場所であり、世界中から才能のある人間が、新しいアメリカンドリームを夢見て集まっている。ことに現地では30万人以上の100万ドルプレイヤーがいるというから驚きだ。
小さな会社を立ち上げ、薄給でもやりたいことを追求しストックオプションを得る。IPO後のキャピタルゲインをさらにITや地域社会活動に投資することにより、常に新しい力をはぐくむ土地、それがシリコンバレーである。
滞在した期間のうち、オラクル社・アップル社を含む気鋭の数社を視察し、実際現場で働いている人たちにブリーフィングの場を設けていただいたが、申し訳ない話、私は非常に不満を覚えた。なぜか?答は簡単である。別に他意はないが「思っていたほどではない(すごくない)」のである。どの話もどこかで聞いたことがあり、とても斬新で画期的なものがあったとはお世辞にもいえない内容ばかりであった。要するに、日本で私がシリコンバレーに抱いていた憧憬がかなり違っていたことを痛感したのである。私が訪問した会社はみな業界のビッグネームばかりであったにもかかわらずである・・・。
ただ、国内で同じようにブリーフィングを受ける際と決定的に違っている点があった。それは「人」である。各社でブリーフィングを行ってくれた方々もそうだが、実際垣間見た現場では、非常に前向きでつねに眼光鋭く、生き生きと真剣に仕事をこなしている。しかも非常に気さくでフレンドリーだ。悲壮感・疲労感がない。みな、自分のキャリアやミッションに誇りを持ち、様々な考え方について議論し、ブラッシュアップするやり方が好きである。また、それについてプレゼンテーションし表現することを楽しんでいるように感じた。また、それをお互いにリスペクトできる土壌がある。そしてみな年齢に関わらず若い。
昔からそうだが、特にIT業界では日本国内にはコアテクノロジーがほとんど存在せず、シリコンバレーで生まれたテクノロジーを現地法人が輸入しローカライズして販売する。要するに国内に新しい技術が入ってくるスピードはオペレーションがコントロールされている限り、さほど時差がないのは当たり前といえばそうだろう。問題は国内にコアテクノロジーがなく、結局は輸入していることにある。これは結局のところ、資源問題と何らか変わるところがない。この場合の資源は「人」ではあるが。
以前も書いたが、「悲しいかな無資源国家日本と資源保有国アメリカとの違いは広がるばかり」だ。ただ化石資源と違い、「人」という資源は無限に開発可能であるはずだ。そのために我々の世代のできることはIT基本法案などという後追いの作業ではなく、ITという新しい(新しい?)要素を取り入れた人材を育てる仕組みを社会・コミュニティーといったもっと大きな枠組みで形成し、活力ある土壌を作り上げることに他ならないのではないだろうか?「モグラをたたく」現状ではあまりにも報われなさすぎる。
今まさしく、学長であり投資家である私に課せられた命題を重く受け止めざるを得ない。私は具体的に動くつもりである。それ以外に日本の生き残る道は残っていないかもしれない。








