上海入りした私を待っていたのは「反日デモの激化」と言うよりは「反日デモが激化しているという報道」であった。
実際の上海と日本で報道されている上海にはかなり大きな差があった、しかし多くの中国の友人は私の安全を最優先に考えてくれた。私の上海交通大学・北京清華大学における講演が安全確保困難との理由から中止となってしまったのだ。
こんな時こそ両国益の毀損を取り返そうと行った経済・学術交流ミッションであっただけに私は残念でならなかった。
帰国直前、外務委員長を務めていたころの外交チャンネルを使い外交不在によるお互いの国益毀損を避けるアイディアを中国要人に伝え上海を離れた。
後は町村外務大臣に仕事をしてもらうしかない。早期に日中首脳会談をセットし両国の関係改善を急いでほしい。
私は「ケンカ哲学」でも書いているが、ケンカはその最中に落とし所を考えなければ良いケンカにすることはできない。
はっきり言って、外交を結ぶ国が相手国の在外公館や在留者を保護するのは国際法の義務であることぐらい中国は分かっている。
しかし愛国を掲げた反日デモを謝罪したりすれば、反日行動の矛先が自国の反政府行動に結びついてしまう国内の事情もあるのだ。
中国は国が大きすぎて成長が早すぎるために苦しんでいる。多くの日系企業がビジネスを展開する事情を考えれば日本がよりケンカ上手である必要があろう。
実際インドは中国との緊張関係改善に成功している、一昔前までは国境をめぐって武力衝突まであった両国だが、最近はインドのソフトウエアと中国のハードウエアを融合すれば世界のハイテク産業を制覇できるとまで宣言している。
インド10億人と中国13億人が仲良くしているのだ、わずか1億人の日本が孤立して良いことなどなにもないことを知ってほしい。
思えば1972年、田中角栄先生・周恩来先生が苦心の末、国交回復を成し遂げてから日中両国民は更なる努力を怠ってしまったようだ。
尖閣諸島、歴史教科書、靖国神社参拝問題などはあまりにも誤解の多い、そしてかみ合わない話にしてしまっている。
日中はいま共存共栄の関係にある。アジアの安定に責任を負う立場でもある。中国の若者たちも、「反日」にとらわれず、もっと両国の可能性に目を向けてもらいたいと思う。日中の良好な関係は東アジアの繁栄に絶対必要だということを日中の若者たちにこそわかってもらいたいのだ。