六カ国協議が、北京で始まった。
北朝鮮は朝鮮半島の非核化へ向け万全の準備があると言い、米国は北朝鮮を主権国家と認め攻撃する意図がないと言う。
しかし具体案での歩み寄りは全く無い、激しい攻防はこれからだ。
各国、歴戦の外交上手が出席している。
特に米国のヒル国務次官補は後ろ盾となる国務長官がパウエル氏からライス氏に代わったことで多彩な戦略を用いることが可能となった。
もともと強硬派だったライス国務長官が、ブッシュ大統領を柔軟路線に変え、金正日総書記を「ミスター」の敬称で呼ばせたわけだが、外交下手の日本人にこのメンタリティは理解できないだろう。
米国が真に北朝鮮へ歩み寄るなんてことは無い、しかし早期に北朝鮮の回答を引き出すことが米国の国益と思えば呼び捨てかミスターかなんてどうでもいいというのが米国流外交なのだ。
もし安倍晋三くんが急に金正日将軍なんて呼びはじめたら日本は大騒ぎになるだろうが、そのくらい多彩な戦略をもって対峙しなければ世界の外交上手国とは渡り合えない。国益を守ることの難しさとはそういうことだ。
韓国の宋旻淳外交通商次官補にも注目している。
頑なに協議拒否をしていた北朝鮮が、1年1カ月ぶりに復帰したのは、米国の態度の変化もあるが、やはり韓国のエネルギー支援の提案が大きい。
韓国は「核廃棄と引き換えに200万キロワットの電力を供給する」と北朝鮮に表明している。
なぜ物資でなく電力か?電力供給は北朝鮮が約束を破った場合、すぐに停止できるので物資援助よりも有効というのが韓国流外交だ。
日本の佐々江賢一郎アジア大洋州局長はどうだろうか。
「核、ミサイル、拉致の諸懸案が包括的に解決されなければならない」と冒頭から拉致問題にこだわる。拉致問題が大変重要で、日朝国交正常化に向けて避けて通れないことは、百も承知だ。
しかし日本の何倍も拉致被害にあっている韓国から「焦点を分散させる行動は望ましくない」と非難されてしまった、これでは外交にならない。
さらに北朝鮮は日本との二国間協議を拒否することで、日本の孤立化に成功しているのだ。悲しいかな北朝鮮流外交は日本より何枚も上手だ。
平たく言えば、口をきいたことも無いご近所さんに頼みごとなどできないと言うことだ。味噌しょうゆを貸したり子供を預かってもらったり出来るのは日頃からご近所付き合いをしているからだ。
お互いの大使館を置いてからでないと言えないことの方が多いことを知ってほしい。
北朝鮮が求めているのは、極論すれば「金正日体制の保証」この一点につきる。
いずれ巨額の経済支援をすることになる日本は、国益に適うご近所付き合いを展開する必要があるのだ。
2005年7月28日 ザ・イトヤマタワーにて 糸山 英太郎