今回、中国の名門清華大学と私が総長をしている湘南工科大学とでデジタル映像に関する共同研究センターの設立、及びその分野に関わる合弁会社設立を協議するために北京を訪れた。中国との学術的な交流や新しいビジネスの構築は驚くべきスピードで進んでいる。
しかし私は政治的に悪化している日中関係を憂慮している。
5年目の小泉首相が未だ訪中していない異常事態は、中国に対しての非礼と日本の国益を大きく損ねる結果を招いているのだ。
この機会に私の外交チャンネルでの日中関係改善も重要であると考えた。
小泉首相の靖国参拝により町村外相の会談が中国側よりキャンセルされるという前代未聞のシリアスな状態の中で、中国各界の要人と意見交換を行うこととしたのだ。
私は中国を信頼できる友人だと思っていることを宣言した上で、自らの考えを伝えた。
中国が小泉首相の靖国参拝を「愚かな選択」と非難していることについては、私も同感である。個人の心情は自由だが、少なくとも首相在任中は参拝すべきではないだろう。
私も代議士時代に靖国参拝をしたことがあることを正直に話した、戦没者を慰霊するためであったが理由はそれだけでは無かった。
はっきり言おう、選挙で日本遺族会の票が欲しかったのである。
しかし時代とともに外交も変わる、中国から理解が得られないかぎり公人である首相が靖国参拝を控えるほうが国益に適う。日本遺族会にも国益のために候補者推選を一時取りやめてもらうことを考えてもいいだろう。
靖国に参拝せずとも8月15日には天皇陛下も参列する戦没者慰霊祭が開催されている。哀悼の意を表し、不戦の誓いをするには絶好の機会であるはずだ。
また私の叔父である笹川良一が不起訴ではあったがA級戦犯であったことを話し、その複雑な思いを伝えた。
叔父笹川良一が戦後国際貢献に全精力を集中したのは、あの戦争に対して重い責任を感じていたからだ。A級戦犯という括りや東京裁判に疑問はあるものの、当時の日本人は自主的に戦争責任とは何かを考えたのだと思う。
私は更に教科書問題・東シナ海開発問題などについても自らの考えを披露した。
私の考えは両国の国益・未来のためであるならば、あらゆる困難を乗り越えなければならないという一点に尽きる。
そして日本が最大限の努力をすることは当然だが、中国側の譲歩も不可欠であることをわかってもらいたいと伝えたのだ。
人民日報社王農社長・清華大学顧乗林校長・楊振亜前駐日大使・全国工商連(中国版経団連)幹部等々。私の正直な思いを伝えたこの友人達こそ、胡 錦濤 国家主席に最も近い人物なのだ。
彼らは、容易に賛成出来ぬ意見も多かったであろうに真摯な態度で私の話を聞いてくれた。そして彼らも自らの考え、日中関係の大切さを熱く語ってくれたのだ。
また天津市 戴相竜市長とは私のスケジュールの都合で会うことが出来なかったが早期再訪中の招待を受けている。
中国は日本が思っているほど日本嫌いではない。
日中の貿易総額は1600億ドルを突破している、今これほど重要なパートナーが他に存在しようか?
日本の政財界からの訪中は他にも聞こえてくるが、江沢民前国家主席に近いコネクションでは全く話にならないそうだ。
今回日本外務省の無力ぶりも露呈した、中国側と私の高度な情報交換に全く触れることができない。かつて外交族であった私は当時の外交スタッフの努力をよく知っているだけに見過ごすわけにはいかない。
いっそのこと外務省の中国外交スタッフは総入替えが必要だろう。
私は政治家の経験を持つ事業家として、そして教育者として日中のあらゆる場所に橋をかけてゆきたいと思っている。
早速、来月末に予定されている高村くん達の訪中には効果的なバックアップを考えている。
最後に国賓待遇並みの歓迎には感謝するが、物々しい警備は日中関係の現実を表していて、いささか悲しく感じた。私が北京市民のなかに自然に歩み入ってゆける関係を絶対につくるつもりだ。
2005年10月28日 ザ・イトヤマタワーにて 糸山 英太郎