北京五輪の聖火リレーが、相次ぐチベット問題に対する中国政府への抗議で、打ち切られる事態となっている。
チベット問題を世界に向けて問題提起する機会にはなったのかもしれないが、このような形で解決を図ることは双方にとって悪手としか言いようがない。
しかし、そもそも一体どれだけの人がそのバックグラウンドについて知っているのだろうか?
「チベットっていう国に旅行に行きたいんですけど・・」なんてことを言う日本の学生も少なくないのが実状だろう。
かつて、チベットは独立主権国家として固有の文化や宗教を持ち、その存在を内外から認められていた。
毛沢東主導のもと1949年に中国による侵略が始まり、中国の圧倒的な武力によってチベットは瞬時に陥落したのである。1959年、指導者のダライ・ラマ14世がインドに亡命し、北インドのダラムサラにチベット亡命政府を樹立した。
チベットという国はなくなり、チベット自治区や四川省などに組み入れられ中国の一部となっているのである。
そして、15万人以上の亡命したチベット人が隣国の難民居留地で生活を送っている。
占領と弾圧によってチベットは国家としての独立、文化、宗教、基本的人権を奪われているのだ。女子供関係なく「チベットは独立国家だ」と口にしたならば酷い拷問や死刑が待ち受けているのが現実だ。
チベット人は自らの人権の尊重を訴え、中国は北京五輪を控えて国家統一を強調したいという思惑がある。
米国大統領を目指すオバマ氏、ヒラリー氏も揃って中国の姿勢を非難している事からも分かるだろうが、世界の大勢はチベット人寄りだ。
なのになぜ、各国が何ら対応できないのかと言えば、チベットが国際連合に代表を持たなかったことが要因の一つと言える。
日本でも10日に安倍元首相の夫人である昭恵さんがダライ・ラマ14世と面会した。非暴力を訴えるダライ・ラマは独立を求めていないと宣言している。
中国政府がここまでして現在のチベットを封じ込めようとするのはやりすぎなのだ。
今、世界中にこのような抗議活動が報道される事はかえって彼の思想に対するパラドックスにもなろう。
五輪でチベット問題を解決しようなどとは甚だ間違っていると私は思う。
中国にもこの事態を真摯に受け止め、世界から認められる国になってほしい。
我々も他人任せではいけない、すべき事はこの問題に対する正しい知識と理解を持つことであろう。無知であってはいけないのだ。
日本もやはり誠意があるならば福田首相の夫人が面会してもよかったのではないか。私は世界平和の象徴でもあるオリンピックが無事開催されることを心より願っている。
2008年4月11日 ザ・イトヤマタワーにて 糸山 英太郎